8月22日 味の素スタジアム 午後6時20分
今まで百戦錬磨のステージで縦横無尽にパフォーマンスし多くの観客を魅了し、驚かせ、感動を与え、また世の中の音楽ビジネスの方向性さえ新たに生み出した一人の音楽家がステージ袖で新人アーティストの初ステージ前かと思うほど緊張し顔はひきつり、そして震えていた、、、

そもそもこの日の予定に彼の出演は予定されておらず、当然告知されていない
スタジアムを埋める5万人の観衆はおそらくこのあたりで次に出てくるであろう若きスーパーグループを待ちわびていただろうし、事実彼らを迎える準備が整い、つかのまの静けさで会場はひっそりとしていた、、、
映像ビジョンにも告知される事なく、日が暮れて暗くなる手前のステージに一人の男が歩き向かってもまだ誰も気が付かない、、、
一人の女性がその存在を確認したのか悲鳴があがる「ヒーッツ」
それでもまだ前列の数人が信じられない様子で確認を急いでいる様子、、、
挨拶をするか少し躊躇したかしないかの間でピアノに座ると彼は人生で一番長い間触れていたであろう鍵盤を触ると落ち着いたのかメロディーを奏で始めた、、、
「DEPARTURES」、、、
そのピアノに反応する観客、、、そしてビジョンに映し出された姿は、、、
「小室哲哉」
味の素スタジアムの5万人が一瞬のうちに目と耳で彼の存在を確信した瞬間に会場は聞いた事のないどよめきとも歓声とも悲鳴ともなんとも言えない空間に包まれる、、、
それから、彼は彼自身が生み出したヒット曲を一音一音噛み締めるように、そして震える指を落ち着かせるように鍵盤に叩き込んでいた、、、
この日この会場でこの景色、この音を聞いた5万人の一人一人はどう受け止め、どのように感じ、そして何を想ったのだろう?
僕はこの日ステージ袖でこの会場、この景色、そしてピアノのコードが鳴り響いた瞬間に全身が総毛立った、、、
そして、、、
テレビや新聞報道やネットでその模様はたくさん流され、またそれについて音楽評論家からメディアコメンテーターが言いたい事言っています、、、当然です、、、どちらも間違ってないでしょう。
ただ、僕は確信しています
8月22日、あの味の素スタジアムで、あの時間、あのピアノの音を一緒に聞いた5万人のお客様、ライブスタッフ、関係者、、、全ての人が次の「音」を待っている事を。
たくさんの感想、意見を頂戴しました、たくさんのメールをもらいました。
その中から一つだけ読んでください
ある若いミュージシャンのブログからの引用です
http://ameblo.jp/triplaneblog/
「a-nation'09東京
TRIPLANE:Vo.&Gt.江畑兵衛
オープニングアクトとして初出演させていただきました。
メインではなく上手の小さなステージで、お客さんがパラパラと入り始めた状況でライブはスタート。
モノローグとアイコトバを演奏し、自分達のやろうとしていたステージングは出来たものの、
やはり悔しい気持ちに包まれました。
自分達の今の立ち位置を現実としてはっきりと見せ付けられた気がしました。
来年はメインステージでパフォーマンスをしたい。
一年それを目標に頑張りたいと思います。
けど中にトライプレインのファンの方もいて本当に心強かった。
開場前のサイン会にも、わざわざそれだけの為に駆け付けてくれた人もいて、感激しました。
改めて、本当にありがとう。
本番終了後、小室哲哉さんの楽屋に挨拶に行きました。
うちのボス・伊東氏が、元小室さんのマネージャーだったので、機会を与えて下さったのです。
出番前の小室さんは、「もう終わったの??良いなぁ~」と多少緊張していた様子でした。
アイコトバのCDを渡し「頑張って下さい」と告げ、楽屋を後にしました。
そして本番。
小室さん率いるglobeの出演はシークレットだった為、ステージに一人現れた小室さんに会場は
最初気付かず、ピアノが往年のヒットメドレーを奏で出しスクリーンに小室さんがアップに
映し出された瞬間、会場全体がどよめき、そのどよめきはやがで大きな歓声と拍手に変わって行きました。
絶頂期の小室さん、実は嫌いでした。avexも。
当時、既にミュージシャンを志していた自分には、小室さんやavexが次々とポップチューン
のヒット曲を量産する様が、音楽を単なる売り物にしているように映っていました。
でも、ステージで独奏する小室さんのピアノの音色が3万人以上の大観衆で埋め尽くされた会場を
本当に柔らかく包み込んでいたその状況に、大観衆の中の一人として自分も魅了され、圧倒され、
感動していました。
そして自然と、中学生の頃に和也と本当に毎日バカやっていた日々を回想したりしていて、
小室さんのヒット曲のどれもが自分の青春時代を彩っていたんだという事に気付かされました。
知らぬ間に止まらない涙が溢れていてビックリしたし、周りの人に見られたら恥ずかしいと
思いながらも、それをまるで無かった事のように拭ってしまう事が、
自分に嘘をついた、凄く「悪」な行為である気がしてそのままでいました。
こんなに綺麗な涙を流す事は今後の自分の人生においてそんなに頻繁にある事か
なって。
誰かのライブを観てあんなに泣いたのは初めての経験でした。
演奏を終えた小室さんは、「皆さん、本当にご迷惑をお掛けしました。本当にすみません」
と言って、何十秒にも渡って会場の皆さんに深々と頭を下げていました。
色んな人が色んな事を自由に言うと思うし、賛否両論あるのは当然でしょう。
けれど、「おかえりー」という温かい声と割れんばかりに会場に鳴り響き続けて
いた拍手が、小室さんの再スタートを証明していた事に間違いはありませんでした。
後のTRFのステージにもスペシャルゲストとして呼ばれ、当時を知る者にとっては
夢のコラボが目の前で繰り広げられました。
現在のavexの地位を築き上げるに当たり、TRFの存在も欠かせなかったと思います。
まだ青く、尖っていた昔の自分の解釈が間違っていたのであって、小室さんやavex
が音楽を単なる売り物にしていたのではなく、人々にわかりやすい形で、紛れも無い「時代」
を作っていたのだと思いました。
だって恐らく3万人のほぼ皆が、各々の過去をフラッシュバックさせながら懐かしのヒット曲に
身を浸していたはずだから。
そして、自分達もavexの一員として新たな「時代」を作りたい、そう強く思いました。
本当に貴重で素晴らしい一日でした。
この日僕がもらった感動を、人々に与え続けられる立場でありたい。
幸運にも、そこに向かって少なくとも足を踏み出せてはいるはず。
あとは自分達を信じて、努力を惜しまず突っ走るだけじゃないかな。」
8月22日、、、小室哲哉、、、ピアノ、、、そして。
